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日記を書くほどまめではないが、何もせずに歳を重ねていけるほどほど潔くもないので、年に一度、前年の出来事のまとめと今年の展望を書いている。 これを他人が見ても多分あまり面白くないだろうが、お正月に暇な人などのために公開している。ちなみに、本人が見ると、「ああ、このころはこんな事を考えていたのだなぁ」などと思い出されて結構面白いものである。 といっても毎年元旦には完成した例しがない。それどころか、次の年まで暫定版のままであることが多い。2011年末も事情により旅行中で現地の30日11:00PMから書き始めているが、あと1時間くらいでupしないと1月1日にまにあわない。と、いうわけで、またまた暫定版。 |
2011年を振り返って 環境問題 |
2012年の抱負 |
昨年は高速炉に期待する一文を書いた、2011年は歴史的津波により福島第一原発が壊滅的な被害を受け、原発への信頼はがた落ちだ。もともと、私は原発が安全だとも、無条件に推進すべしとも思っていなかったが、これを受けて日本の世論は脱原発にかなり傾いている。 いろいろな議論があるが、原発のメリット・デメリットとも国民をあげた議論は行われてこなかった。そもそも、原発を運転するメリットの方は正確に理解している人はほとんどいないようだ。専門家だけが判断するのではなく、メリット・デメリットをきちんと説明した上で、国民的に判断すべき問題だ。 2011年現在国内で進んでいる、なし崩し的な「脱原発」は倫理的にきわめて疑問だ。 2011年におこったことは、製造業の急速な海外移転による節電による原発停止だった。海外での電力消費効率は日本より低く、この対策は電力を浪費し、地球的には原発依存を高めてしまう。中国が現在計画中の100機の原発をさらに増設する結果になる可能性はかなり高い。 日本人の居住地域から原発をちょっと遠ざけることが目的であればよいが、これでは東京から遠いところに原発を設置するというこれまでの身勝手な解決方法の延長でしかないだろう。 世界的に、原発事故の危険を減らし、生活レベルを維持しつつ脱原発を目指すのであれば、まずはここ10年で使えるエネルギー源や、各国の精算設備のエネルギー消費効率をよく確認し、「脱原発の気分」ではなく実効性のある原子力安全性向上戦略へと早く方向転換するべきではないか。 核の安全保障のために必要であるという面もきちんと説明されていない。国内で再処理はほぼ絶望的だが、これも核の安全保障という面で問題だ。原発は型式により核兵器に転用できるプルトニウムの生産能力に差がある。現在世界の原発で高い市場占有率を誇る日本製原発はもちろん、核兵器への転用が困難なタイプである。しかし、プルサーマル処理をきちんと行えば核兵器に転用可能なプルトニウムはさらに減少し、ほぼ兵器利用が不可能な放射性物質だけが残る。1980年代に比べれば核戦争への緊張はかなり低下したとはいえ、世界において核兵器の悲劇をきちんと理解しているのは日本だけだ。核戦争の防止に日本が全力を尽くし、2度と核兵器が使われなくなるようにすることは、日本人に与えられた責務ではないかと思う。
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国内原発の停止は何をもたらし、脱原発にどの程度効果があるだろうか。これがとても疑問である。 2011年、海外への生産移転と海外投資は、過去最高だった。国内の製造業のエネルギー消費量は20%程度減少したが、現状のやりくりを長期的に続けるのは無理で、長期的には製造量自体20%程度減少する方向に向かうと推測している。 減少した生産量は主にアジアで代替されているが、中国、ベトナムとも現在電力はぎりぎりの状況で、今後の経済発展にむけ原発の建設が盛んである。これらの原発の建設を前倒しすることで、日本の原発停止分が代替えされることになるだろう。 化石燃料、自然エネルギーを予定より増やすという計画もあるが、この実現性はとても疑わしい。化石燃料価格は欧州危機がされ景気が回復すれば、新興国需要を見込んで最高レベルに達するはずだ。中国はそもそも、すでに大気汚染がひどく、環境対策の遅れに対する市民の怒りも限界に達しており、むしろ今後石炭火力の廃止が加速する可能性の方が高い。 自然エネルギーも死屍累々だ。1820万kwのピーク発電量を誇る中国山峡ダムは地震、洪水と想定外の災害の連発にみまわれ中国の福島原発化している。中国は10年間で20000万kwの電力供給増を必要とし、自然エネルギーで原発と同じ10000万kw程度を確保する計画だが、その多くは実際には原発に頼らなければならなくなるだろう。 こういう状況下で、国内の原発停止は、脱原発にいささかの貢献があるだろうか? 私はとても疑わしいと思う。むしろ日本が原発事業から撤退してしまえば、国際的な原発産業における発言力が低下し、中国が主導する原発産業が確立するだろう。 中国とて、世界の核戦争のリスクが増大することを歓迎することはないだろうが、日本人としては、核の悲劇を二度と起こさないため、少しでも原子力産業の中でその知恵と熱意を核戦争防止のために発揮したいと思うのである。 おまけ:太陽光発電であるが、とりあえず現状どの予測を見ても太陽光発電が今後10年以内に、いかほどでも世界のエネルギー需要に貢献するという予想はない。ちなみに原発20機分の太陽電池を5年で製造するには原発20機分の5年間の全発電量が必要と言われている。これではまさに太陽電池、5年間投入した電力を残り5年で取り出すことしかできないので、10年以内に原発を減らすにはあまり役立たないことが明白だ。 それではどうするか。 (1) 安全性の確認された原発は稼働する これにより、日本の原発1機につき最低でも海外の新規の原発1機の建設を抑制できる。また、国内の方がエネルギー効率がよいから、うまくすれば原発1機を稼働させるごとに海外の原発1.5機程度の新設を抑制できる。 (2) 安全性を高める 今後20年程度は単純に原発を止めると、かえって後で原発を余分に建設することになる。したがって、安全性を高め、稼働率を上げる。 (3) 核兵器転用防止策を強化する 今後20年はこれまでにないほど稼働する原子炉が増え、世界各地に普及する。再処理は経済性のためには無用だが、核兵器に転用可能なプルトニウムの量を抑制するために必要かもしれない。高速炉の開発や、再処理サイクルが核兵器への転用防止に有益ならば、ぜひ安全保障のため、経済性にかかわらずきちんと処理すべきではないか。 (4) 代替エネルギーの開発 太陽電池その他の代替エネルギーの研究開発には注力すべきである。しかし、研究開発に必要以上の大金をつぎこんでもあまり効果はないし、実用性がない段階でのパイロットプラントなどなんの意味もない。 毎年、ベスト100の研究成果に資金を出すなど、研究開発を加速する方が得策だ。 発電設備の交換は、どんな技術であっても20年程度かかる大事業である。参考になるのは戦前、戦後の電力事業の歴史だ。実は日本において電力が安定して十分供給されるようになったのは、現在の地域電力会社の体制が確立してからだ。これが最高ではもちろんないが、わざわざ過去に失敗した体制に戻すことはない。今回の失敗とともに、過去における失敗もきちんと見て、効率的で信頼できる電力事業の制度設計を行う必要がある。
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工芸大学の授業も8年目突入。 いまだにちょこちょこ改良を続けている。今年は、プログラミング基礎のスライドに動画をかなり追加した。->動画を使った部分はこちら 昨年までの授業だと、このへんですこしダレ気味だっただ、今年は順調だ。
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